Pulse D-2

真っ青な空の下

 真っ青な空の下、みんなでレールの上を歩いた。
 真っ白な雲が流れていって、みんなの足元に影を落とした。
 なんでこんなことしてんだろうと繰り返し考えてる自分がいて、
 考えたってしょうがねえじゃんばっかじゃねえのと笑い飛ばす。
 それでもふっと立ち止まり変わらず青い空を見上げれば、
「どうしたの?」
「何だ? どうかしたのか?」
「拓也お兄ちゃん?」
「なんじゃいなんじゃい?」
「ナーニー?」
 と、みんなが口々にたずねてくる。
「いやぁ…いい天気だなーって思ってさ」
 曖昧に笑顔を作って答えると、だからさっさと行こうとか逆に少し休もうとか
 好きなことを言ってめいめいに動く。
 それはどこかオモチャ売場で展示用に動かされてる人形みたいで、
 みんなには悪いけどちょっと笑えた。
「拓也お兄ちゃん、今度は笑ってるよ」
「何がおかしいんだよ」
「拓也、やーらしー」
「なんじゃい、思い出しわらいかマキ」
「ヤーラシイー」
 軽く睨まれたり小突かれたりしたけど、そんなみんなの反応が嬉しかったりして。
 俺たちは即席の仲間だけど、なんかこういうのもいいかなぁなんて思えてくる。
 偶然乗り合わせたトレイルモンだったけど、みんなと一緒でよかった。
 応えてくれる声や向けられる笑顔にこんなに俺はほっとしてる。
 だからかな。応えてくれない一人を思う。
「あいつ、どうしてっかなぁ」
「え? 誰?」
 泉が聞くけど答えない。いいんだ、これは独り言だから。
 もう一度空へと顔を向ける。
 あいつの上も、こんなふうに晴れてるかな。
 変な奴、無愛想な奴、わけわかんねぇ奴。
 でも――
 元気にやってるといいけど。
 なんて思ってみてからまた、ばっかじゃねえのと肩をすくめた。
 あの調子なら平気に決まってんじゃん。
「よっし、出発ー」
 突然言って歩き出す。
「もう、勝手に止まったくせに」
 案の定、呆れたような泉の声がしたが、それ以上続く文句はなかった。



 真っ青な空の下、みんなでレールの上を歩いた。
 真っ白な雲を見つめながら、こっそり心の中で呟いた。

 このレールはあいつにも繋がっていくのかな。

更新日:2003.09.05


[拓也&輝二〔Stories〕]へ戻る