若手能その3「藤」

いい加減に終わりにしたい能日記です(笑)。
もうちょっとだけお付き合いくださいませv
■藤(ふじ)■あらすじ
都から来た僧が、藤の名所、越中国・多〓の浦(たごのうら)を通りかかったところ、ちょうど藤の花が盛りを迎えていました。僧は藤にまつわる古歌
「常磐なる松の名たてにあやなくもかかれる藤の咲きて散るやと」
を思い出して口ずさみます。すると、どこからともなく美しい女性が現れ僧に話しかけます。女は僧の引用した藤の花散る和歌が気に入らず、心無き旅人よと咎め、多〓の浦に咲く藤の和歌
「多枯の浦や汀の藤の咲きしより波の花さえ色に出でつつ」
をなぜ詠じないのかと嘆きます。僧が女と歌についての問答をし、女の素性を尋ねると、女は藤の花の精であると明かして姿を消してしまいます。〈中入〉
その夜、僧の夢の中に藤の精が現れ、春から夏にかけて咲く藤の風情を美しく謡い舞います。そして、花の精の身でありながら仏法を行う尊い僧と言葉を交わせるのは、「異性化身」「自在不滅」の縁によるものだと喜びの心を述べ、夜が明ける頃、霞にまぎれて姿を消していくのでした。
舞台には松に藤がかかった作り物が出されます。美麗な和歌を連ねた、素直な作りながら美しく幻想的な曲です。
宝生流・金剛流・観世流にある曲ですが、観世は後の改作の手が加えられており、宝生・金剛が原作のようです。江戸時代中期ごろにできた曲です。
藤の精が舞う「序之舞」には太鼓が入ります。これは本曲のような女体や老体の草木の精のしっとりとした舞の中に、華やかな雰囲気を加わえています。
※「多〓の浦」の〓はしめすへんに古と書く。(示古)

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