敦盛にやられた~(笑)

本日はいただいたチケットで宝生流の能を見に行きました(^o^)/
ゆださん、本当にありがとうございました♪
で、タイトルの通りになりました(笑)。
今日の番組は以下のとおり。
宝生夜能
 於:宝生能楽堂
 開演18:00 終演21:05
能『敦盛』
 シテ(草刈男/平敦盛の霊) 小倉伸二郎
 ツレ(草刈男達) 辰巳大二郎,川瀬隆士,藤井秋雅
 ワキ(蓮生法師(熊谷直実)) 高井松男
 アイ(里の男) 竹山悠樹
 笛:一噌幸弘 小鼓:鵜澤洋太郎 大鼓:大倉栄太郎
 地謡:小倉敏克,渡邊筍之助 他(略してごめんなさい)
狂言『鎌腹』
 シテ(男) 野村萬斎
 アド(妻) 深田博治  アド(男) 石田幸雄
能『葵上』
 シテ(六条御息所の霊) 當山孝道
 ツレ(照日の巫女) 大友 順
 ワキ(横川小聖) 工藤和哉
 ワキツレ(朝臣) 野口能弘
 アイ(家人) 月崎晴夫
 笛:内潟慶三 小鼓:幸 信吾 大鼓:柿原弘和 太鼓:金春國和
 地謡:亀井保雄,大坪喜美雄 他(ほんとにすみません)
どれもとても見たかった曲なのですが、中でも楽しみにしていたのが「敦盛」。私の大好きな曲です。
しかし、これまでにも見たことはあるものの、なかなか納得がいかずにいた曲でもありました。
というのは、この曲、前半が直面(ひためん=能面をつけずに演じる)なのです。
敦盛は17歳の若さで討死した平家の公達。笛の名手で美しい青年だったのです。それを素顔を面として演じろというのですから、なかなかね、うん、どうしてもね、はまる役者がいないのですよ(^_^;)。能は若手って言っても30代ですし(笑)。
顔を見るな、舞台を見ろ、とは思うんですけれども、やっぱり見ちゃいますよ、ね(笑)。
が。今日はよかった! すんごくよかった!! もうね、この1曲だけで帰ってもいいと思うくらいよかったんです。うっふっふ。
そんなわけで、以下、ハッスル日記です(笑)。
小倉伸二郎さんのシテは初めて見ました。(というか、私は宝生流を見ること自体少ないので…)
シテはツレと共に4人で現れるのですが、この登場からしてなんだかすっきりと姿勢がよくてきれい。それでまず第一印象すこぶるよし♪ 装束が青系にひとり緑(=シテ)というのも私のハートを直撃だったのかもしれませんが(大笑)。
舞台前部に立つ姿を見、端正な直面に嬉しくなりつつも警戒を忘れずにいた(「顔だけで判断しちゃだめだ!」と自分を抑える心があるのです)私でしたが、発っせられた声にまたもやクラリ。あっ、いい声…vvv
いい声にもいろいろありますけれども、伸二郎さんの今回の声はさわやかな感じ。やや高めで若々しい声です。詞章も明瞭。
(ちなみに伸二郎さんは33歳(もしくは34歳)。今「敦盛」を見ることができて本当によかったなぁとつくづく思います)
ワキの蓮生法師(彼こそ敦盛を討った熊谷次郎直実が出家した姿なのですが)に再度、弔いを頼んで前シテは姿を消します。
ここまでの前場は、樵歌牧笛を絡めての問答など、静かな中に教養と穏やかな風雅とが漂います。そこにいるのは出家と農夫でしかないのに、シテとワキの掛け合いなどもとても優しげなんですね。
しかも、討った者と討たれた者なのに、まったくぎすぎすしたところはありません。それが、私がこの曲を好きな理由のひとつでもあると思います。
アイの語りをはさんで後シテ登場。見てる私はさらに気分高揚。
(ちなみに、アイはワキに対して本人(直実)のことを語って聞かせることになるわけでして、その「何だよ、俺に語らせないで先に言ってくれよ!」な状況になんとなく私のほうが恥ずかしくなってしまうのですが、皆さんどう思って見てるのかなぁ…?/笑)
後半は甲冑姿で敦盛が現れます。もう直面ではありません。面は十六(じゅうろく)や今若、または敦盛(専用面)を使うはずなのですが、私には見てもよくわかりません。残念。なかなか美形の面でした(笑)。
赤(朱)、白、金、藤(だったか?)の華やかな装束でしたが、私の目を引いたのは刀でした。刀の鞘が美しかった。
明るい赤(朱色よりはオレンジ色に近い軽やかな明るさ)に僅かに金が入った感じ。石突きも金。もっと深い赤や深緑、黒、茶などはよく目にしますが、この明るさの赤の鞘は見た記憶がありません。私の位置からはそれがとてもよく映えていたのです。敦盛の若々しさにふさわしいと感じました。
また、前場同様、全体的にさわやか。武者姿ではあるものの、厳しい風貌ではありませんでした。
正面席最前列中央付近で見ていた私たちは、すぐそこでひたと前を見据えるシテにかなりドキドキ(^_^;)。
若手の修羅能なので、もっときびきびと力強く! という意見もあるかと思いますが、私は今回のやわらかさを持った敦盛にはひじょうに好感を持ちました。だからこそ中ノ舞もしっくりときたのではないかと思います。
ただ、ひとつだけ残念だったのは、「敵はこれぞと討たんとするに…」の部分。
自らの死を語るうちに思わず敦盛が蓮生に斬りかかろうとしてしまう場面ですが、ここだけはもっと勢いよく斬りつけてほしかった。一瞬のぶつかり合いがほしいです。
また別の修羅ものの際には、勢いのある舞台を見せていただきたいと思います。
以上、シテばかりになってしまいましたが、今回は囃子方も結構好みの方が並んでいて嬉しかったですvv(でも幸弘さんは屋外向きかも、とちらりと思いました)
長くなってしまったので、残りは簡単に(^_^;)。
萬斎さんは、やっぱりこういう笑い要素たっぷりの曲がいいな。先日見た舞狂言「蝉」よりは、今回のほうがぴたりときましたね。
深田さんの「わわしい」女も似合っていましたし、幸雄さんの「いい人なんだけどちょっととぼけた感じ」はほんとに好きv
最後の「洗足の湯をわかしておいてくれ」というくだり(言葉は正確ではありませんがご容赦)があったかくていい曲です。
葵上は残念な出来。
シテは序盤の声がまったく聞こえなかった。後シテもややうつろ。その分、見ようによっては恨みは感じられたかも。ツレや葵上(小袖だけが舞台に置かれている)をキッと睨む目は怖かった(^_^;)。最後、本当に成仏に向かっているのだろうか?と思わずにはいられなかった。
ツレは妖しさと美しさとかわいらしさが同居して違和感なし。好み。
ワキはやや弱い。怨霊とのバトルは迫力不足。
囃子方もいまひとつ。小鼓の声は好みから大きく外れる。

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